看護師の転職で求人を見始めると、「給与は上げたい」「夜勤は減らしたい」「通勤は短くしたい」「教育体制も気になる」と条件が増え、どの求人を選べばよいのか分からなくなることがあります。
そんなときは、求人を探す前に、転職条件を「必須」「希望」「避けたい」の3つに分けてみましょう。
ただし、「人間関係がよい職場」「働きやすい職場」と書くだけでは、求人を比較したり面接で確認したりできません。
大切なのは、
- 何を求めるのか
- なぜ必要なのか
- どこまでなら許容できるのか
- 応募先に何を聞けば確認できるのか
まで具体化することです。
この記事では、そのままコピーして使える「転職条件整理シート」と「求人比較シート」を用意しました。紙に印刷して書き込んでも、表計算ソフトへ転記して使っても構いません。
この記事の監修

酒井 崇
(株式会社エスネットソリューション)
株式会社エスネットソリューション代表取締役
株式会社エスネットソリューションは、大分県にある医療・介護・福祉に関わるすべての方をトータルにサポートする会社です。
医療・介護・福祉に特化した無料の転職サポートを、大分県をはじめ全国で提供しています。
看護師の転職条件を整理する目的とシートの使い方

転職条件を整理する目的は、「理想の職場を思いつく限り書き出すこと」ではありません。
求人を見たときに、自分にとって重要な条件を同じ基準で確認できるようにすることです。
たとえば、「夜勤がつらい」という悩みだけでは、求人票を見ても判断基準がはっきりしません。
そこで、
「夜勤は月2回までなら可能」 「連続した夜勤は避けたい」 「夜勤開始は入職後すぐではなく、業務に慣れてからがよい」
など、実際に確認できる条件へ変えていきます。
条件は次の3つに分けると整理しやすくなります。
| 区分 | 考え方 | 例 |
|---|---|---|
| 必須 | 満たされないと継続して働くことが難しい条件 | 送迎に間に合う終業時刻、最低限必要な収入、夜勤回数の上限 |
| 希望 | 満たされると働きやすくなるが、ほかの条件との比較ができるもの | 通勤30分以内、希望診療科、研修制度 |
| 避けたい | 前職などで困った経験があり、できるだけ繰り返したくないこと | 頻繁な急なシフト変更、相談先が分からない状態、長時間の通勤 |
必須条件ばかりを増やすと候補を絞りすぎることがあります。一方、本当に生活や健康に必要な条件まで「希望」に下げてしまうと、転職後に同じ問題が起こる可能性があります。
迷ったときは、「この条件が満たされないと、具体的に何に困るのか」を考えてください。
たとえば「通勤30分以内」を希望していても、理由が「できれば近いほうがよい」であれば希望条件として扱えます。
一方、「保育園のお迎えに間に合わせるため、18時までに必ず到着する必要がある」という理由なら、通勤時間や終業時刻は必須条件として考えたほうが比較しやすくなります。
必須・希望・避けたい条件を書き出す記入用シート

まずは、次の表をコピーして使ってください。
最初から全部埋める必要はありません。「求人票で分からない」「応募先へ聞かなければ分からない」という項目は、そのまま質問欄へ残しておきます。
転職条件整理シート
| 条件 | 区分 | 理由 | 許容範囲 | 応募先に聞く質問 | 確認結果 |
|---|---|---|---|---|---|
| ______ | ____ | ________ | ________ | ____________ | ______ |
| ______ | ____ | ________ | ________ | ____________ | ______ |
| ______ | ____ | ________ | ________ | ____________ | ______ |
| ______ | ____ | ________ | ________ | ____________ | ______ |
| ______ | ____ | ________ | ________ | ____________ | ______ |
| ______ | ____ | ________ | ________ | ____________ | ______ |
| ______ | ____ | ________ | ________ | ____________ | ______ |
| ______ | ____ | ________ | ________ | ____________ | ______ |
「条件」には、夜勤、給与、休日、通勤、配属、仕事内容、教育、相談体制などを書きます。
「区分」には、必須・希望・避けたいのいずれかを入れます。
特に重要なのが「理由」と「許容範囲」です。
たとえば「通勤30分以内」とだけ決めてしまうと、35分の魅力的な求人が出てきたときに迷います。
そこで、
「希望は30分以内。ただし乗り換えが少なく、終業時刻に問題がなければ45分まで検討できる」
というように許容範囲を決めておくと、求人を機械的に切り捨てずに比較できます。
確認結果には、「満たす」「許容範囲内」「未確認」「許容範囲外」など、自分が分かりやすい言葉を記入するとよいでしょう。
悩みを転職条件に変える記入済み例

ここからは、実際にシートへ書くとどのようになるのかを見てみましょう。
以下の人物、条件、金額はすべて説明のための架空例です。給与額などは看護師の相場や推奨条件を示すものではありません。
夜勤・収入・通勤・教育を整理した架空例
| 条件 | 区分 | 理由 | 許容範囲 | 応募先に聞く質問 | 確認結果 |
|---|---|---|---|---|---|
| 夜勤回数 | 必須 | 夜勤が増えると生活リズムを保ちにくい | 月0~2回まで | 通常の夜勤回数は月何回ですか。連続することはありますか | 未確認 |
| 月の総支給額 | 必須 | 固定費と貯蓄を考えると月25万円は確保したい | 25万円以上。手当の内訳も確認する | 夜勤2回の場合と夜勤なしの場合の想定支給額、手当の内訳を教えてください | 未確認 |
| 通勤時間 | 希望 | 通勤による負担を減らしたい | 希望45分以内。最大60分まで | 始業前に必要な準備時間や、通常の退勤時刻を確認したいです | 求人ごとに確認 |
| 中途入職者への教育 | 必須 | 未経験の業務があり、最初に相談できる環境が必要 | プリセプター制度に限定せず、相談担当者が明確なら可 | 中途入職者は入職後、誰に相談しますか。独り立ちはどのように判断しますか | 未確認 |
| 急な勤務変更 | 避けたい | 前職で急なシフト変更が多く生活調整が難しかった | 例外的な変更は可。頻繁な変更は避けたい | シフト確定後に勤務が変更されることはどの程度ありますか | 未確認 |
このように書くと、「夜勤なしがよい」「教育がしっかりしているところがよい」という希望が、求人ごとに確認できる条件に変わります。
「人間関係がよい」を質問できる条件へ変える
転職条件で特に具体化しにくいのが、人間関係や職場の雰囲気です。
「人間関係がよい職場ですか」と質問しても、人によって感じ方が違うため、判断材料を得にくいでしょう。
そこで、自分が「人間関係がよい」と感じるために必要な状態へ分解します。
| 抽象的な希望 | 確認できる条件への置き換え | 質問例 |
|---|---|---|
| 人間関係がよい | 困ったときの相談先が決まっている | 中途入職者が困った場合、通常は誰に相談しますか |
| 質問しやすい | 独り立ちまで確認を受けられる仕組みがある | 経験のない処置や業務は、どのように確認を受けながら進めますか |
| 中途入職者がなじみやすい | 入職後の面談やフォローの機会がある | 中途入職者との面談や振り返りはありますか |
| 協力しやすい | 業務が集中したときの応援・分担方法が決まっている | 業務量に偏りが出たときは、チーム内でどのように調整していますか |
見学時の雰囲気も参考にはなりますが、一度の見学だけで職場全体の人間関係を断定することはできません。
「誰に相談するのか」「教育やフォローはどう行われるのか」「忙しいときにどう助け合うのか」など、実際の仕組みや行動を確認したほうが比較材料として使いやすくなります。
求人A・Bを同じ条件で比較するシートと記入例

条件整理ができたら、気になる求人を同じ項目で比較します。
給与だけは求人A、休日だけは求人Bというように別々の基準で眺めるのではなく、自分が作った条件をそのまま横に並べることがポイントです。
求人比較用の空欄シート
| 条件 | 区分 | 許容範囲 | 求人A | 求人B | 未確認事項・質問 |
|---|---|---|---|---|---|
| ____ | ____ | ______ | ______ | ______ | ________ |
| ____ | ____ | ______ | ______ | ______ | ________ |
| ____ | ____ | ______ | ______ | ______ | ________ |
| ____ | ____ | ______ | ______ | ______ | ________ |
| ____ | ____ | ______ | ______ | ______ | ________ |
| ____ | ____ | ______ | ______ | ______ | ________ |
求人A・Bを比較した架空例
次の求人A・B、勤務条件、給与額もすべて架空です。実在する医療機関や求人とは関係ありません。
| 条件 | 区分 | 許容範囲 | 架空の求人A | 架空の求人B | 未確認事項・質問 |
|---|---|---|---|---|---|
| 夜勤 | 必須 | 月0~2回 | 月2回の想定。連続夜勤は未確認 | 夜勤なし | 求人Aで夜勤が連続することはあるか |
| 月の総支給額 | 必須 | 25万円以上 | 約26万8,000円。夜勤手当を含む想定 | 約25万4,000円。日勤のみ | 試用期間中の給与、手当の内訳を確認 |
| 通勤 | 希望 | 希望45分以内、最大60分 | 約50分 | 約35分 | 実際の退勤時刻も含めて確認 |
| 教育 | 必須 | 相談担当者が明確 | 入職後3か月は担当者あり | オリエンテーションあり。個別の相談担当者は未確認 | 求人Bで独り立ちまで誰がフォローするか |
| 相談体制 | 希望 | 困ったとき複数の相談先がある | 教育担当者と病棟リーダーに相談可能との説明 | 未確認 | 求人Bの相談経路を確認 |
| 急なシフト変更 | 避けたい | 頻繁でなければ可 | 未確認 | 原則シフト確定後の変更なしとの説明 | 求人Aの変更頻度を確認 |
この例では、求人Aと求人Bのどちらかが一律に優れているとは判断できません。
求人Aは収入や教育面が希望に合う一方、通勤時間や夜勤の組み方に確認事項があります。求人Bは通勤や夜勤の条件を確認しやすい一方、教育や相談体制に未確認項目が残っています。
重要なのは、○の数を数えて決めることではありません。
特に「必須」にした条件については、未確認のまま判断せず、応募や面接、見学などの段階で確認します。
未確認の条件を埋める質問例
| 未確認の条件 | 質問例 |
|---|---|
| 夜勤 | 夜勤は通常月何回程度でしょうか。連続する勤務になることはありますか |
| 給与 | この給与例にはどの手当が含まれていますか。夜勤回数が変わった場合の支給額も確認できますか |
| 残業・退勤時刻 | 所定の終業時刻を過ぎる場合は、どのような業務が理由になることが多いですか |
| 教育 | 中途入職者は、入職後どのような流れで業務を覚えますか。相談担当者は決まっていますか |
| 配属・業務 | 入職時の配属と主な業務内容を教えてください。将来的に配属や業務が変わる可能性はありますか |
| シフト | シフトはいつ頃決まり、確定後に変更されることはどの程度ありますか |
求人情報だけで分からないことを質問するのは、特別なことではありません。
厚生労働省は、求人募集時には業務内容、就業場所とその変更範囲、始業・終業時刻、休日、賃金など一定の労働条件を明示する必要があると案内しています。採用時にも、労働時間や賃金、就業場所・業務とその変更範囲など一定の労働条件について書面等で確認することが重要です。
そのため、求人票を見て終わりにせず、応募・面接で不明点を確認し、労働契約を結ぶ段階では労働条件通知書などの書面と、それまでに聞いた内容に食い違いがないか確認しましょう。
条件が競合したときの見直し方

条件を書き出していると、「夜勤は減らしたいが、収入も維持したい」「通勤は短くしたいが、希望する診療科も譲りたくない」といった競合が出てきます。
この場合、すぐにどちらかを諦める必要はありません。
まず「なぜその条件が必要なのか」と「どこまでなら許容できるのか」に戻ります。
収入と夜勤が競合する場合の架空例
たとえば、次のような条件を設定しているとします。
| 条件 | 最初の希望 | 理由 | 見直した条件 |
|---|---|---|---|
| 夜勤 | 夜勤なし | 生活リズムを整えたい | 月2回までなら検討可能 |
| 収入 | 月25万円以上 | 固定費を考えると必要 | 25万円以上は維持 |
| 通勤 | 30分以内 | できるだけ負担を減らしたい | 45分まで広げられる |
| 教育 | プリセプター制度必須 | 未経験業務が不安 | 制度名にはこだわらず、担当者と教育手順が明確なら可 |
このケースでは、「夜勤なし」そのものより「生活リズムを崩したくない」という理由が重要だったため、夜勤回数に許容範囲を設けています。
また、「プリセプター制度」という名称ではなく、「相談担当者がいて、教育の進め方が分かること」を必要条件として残しています。
反対に、健康上の理由、育児や介護の時間、生活に最低限必要な収入など、許容範囲を広げると継続勤務が難しくなる条件は、無理に下げる必要はありません。
条件が競合するときは、「条件の言葉」ではなく「条件を置いた理由」を見直してください。
厚生労働省も、看護職がライフサイクルやライフスタイルに合わせて柔軟な働き方を選び、キャリアの継続や形成につなげる考え方を紹介しています。
働き方を選ぶときも、給与や勤務形態を一項目だけで比べるのではなく、生活とキャリアの両方を含めて考えることが大切です。
まとめ|看護師の転職条件は「理由・許容範囲・質問」まで書く

看護師が転職条件を整理するときは、希望を並べるだけではなく、「必須・希望・避けたい」に分け、それぞれの理由と許容範囲まで書いてみましょう。
そのうえで、同じ条件を求人A、求人Bへ当てはめると、何が確認済みで、何がまだ分からないのかが見えやすくなります。
たとえば「人間関係がよい職場」を探すなら、その言葉だけで判断するのではなく、
「中途入職後の相談相手は誰か」 「定期的に振り返る機会があるか」 「忙しいときはどのように業務を分担するのか」
といった、応募先に確認できる内容へ置き換えます。
条件整理シートは、一度作って終わりではありません。求人を見て分かったことや面接で確認したことを追記し、必要なら必須・希望・許容範囲を見直してください。
紙へ印刷して書き込んでも、表計算ソフトにコピーして求人ごとに列を増やしても使えます。
「何となくよさそう」という印象だけではなく、自分が働き続けるために必要な条件と、その根拠を確認しながら転職先を比較していきましょう。
参考情報:厚生労働省「募集時等に明示すべき事項」、厚生労働省「採用時にはどのような労働条件が明示されるのでしょうか?」、厚生労働省「看護職員の多様な働き方について」。確認日:2026年10月3日。本文の人物・求人・給与条件は説明のための架空例です。

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