「夜勤をやめて日勤のみへ転職したら、年収はいくら下がるのだろう」「今の生活費を払っていけるだろうか」と不安になる看護師の方もいるでしょう。
日勤のみへ転職したときの年収差は、一律に「○万円下がる」とは決まりません。夜勤手当だけでなく、基本給、毎月固定で支給される手当、残業やオンコールなど勤務回数によって変わる手当、賞与が変わるためです。
まず確認したいのは、次の式で現在の職場と転職候補を同じ条件にそろえることです。
額面年額 = 月額の固定部分×12 + 年間の変動部分 + 年間の残業代 + 賞与
この記事では、税金や社会保険料を差し引く前の「額面」で比較します。手取りは給与額だけでなく、税・社会保険や家族状況などによって変わるため、「額面の○割」などとは一律に換算しません。
また、本文中の金額は計算方法を示すための架空の例です。日勤のみで働く看護師の平均年収や相場を示すものではありません。
この記事の監修

酒井 崇
(株式会社エスネットソリューション)
株式会社エスネットソリューション代表取締役
株式会社エスネットソリューションは、大分県にある医療・介護・福祉に関わるすべての方をトータルにサポートする会社です。
医療・介護・福祉に特化した無料の転職サポートを、大分県をはじめ全国で提供しています。
結論|日勤のみの年収差は、基本給・固定手当・変動手当・賞与で決まる

夜勤のある職場から日勤のみへ移るとき、最も分かりやすく減る可能性があるのは夜勤手当です。しかし、実際の年収差は夜勤手当だけを引けば求められるとは限りません。
比較するときは、収入を次の4つに分けます。
基本給
毎月支給される給与の基礎となる金額です。賞与の算定基礎になっている職場もあります。
固定手当
資格手当、職務手当、役職手当など、一定の条件を満たすことで毎月定額で支給されるものです。
変動手当
夜勤、オンコール、休日勤務など、実際の勤務回数によって金額が変わるものです。残業代も別に把握します。
賞与
基本給の何か月分として計算するのか、ほかの手当も算定基礎に含まれるのか、業績や評価で変わるのかを確認します。
たとえば夜勤手当が1回1万2,000円で、毎月4回の夜勤をしている場合、ほかの条件がまったく変わらなければ、
1万2,000円×4回×12か月=57万6,000円
が年間の差になります。
ただし、日勤求人へ移ることで基本給が高くなる場合もあれば、反対に賞与の支給条件が変わる場合もあります。
そのため、「夜勤をやめれば必ず大幅に年収が下がる」「基本給が高い求人なら年収も高い」とは決めず、年間の総額で比較する必要があります。
現在と日勤求人の年収を同じ前提で計算する方法

年収を比較するときに重要なのは、同じ項目と同じ期間で計算することです。
額面年額の基本式
比較用の式は、次のように整理できます。
額面年額
=(基本給+毎月の固定手当+固定残業代がある場合はその金額)×12
+夜勤・オンコール・休日勤務などの年間変動手当
+固定残業代に含まれない残業代
+賞与
固定残業代が月給に含まれている場合、その金額を固定部分と残業代の両方に入れると二重計上になります。
固定残業代は1回だけ計上し、その時間数を超えた残業に対する賃金が別途発生すると見込まれる場合は、超過分を分けて考えます。
賞与が「基本給の○か月分」と明確に示されている場合は、
賞与見込み=賞与の算定基礎×支給月数
として計算できます。
ただし、「前年度実績○か月分」と書かれていても、自分にも同じ金額が確定しているとは限りません。何を算定基礎とするのか、支給月数は確定条件なのか実績なのかを確認しましょう。
通常年度と初年度を混ぜない
現在の年収が1年間勤務した通常年度の金額なのに、転職先だけ入職初年度の賞与で計算すると、働き方による本来の年収差が分かりにくくなります。
まず、
現職の通常年度12か月 vs. 転職先の通常年度12か月
で比較します。
そのうえで実際の転職時期が決まったら、
転職初年度=入職後に支給される固定給与+実際に見込める変動給与+初年度に支給対象となる賞与
として、初年度の収入を別に計算してください。
初年度は賞与の算定期間に満たないことなどにより、通常年度と支給条件が異なる場合があります。
自分の給与明細と求人条件を入れる比較表
現在の職場と日勤候補について、同じ項目を埋めます。
| 比較項目 | 現在の職場 | 日勤候補 |
|---|---|---|
| 比較する年度 | 通常年度/初年度 | 通常年度/初年度 |
| 基本給(月額) | 円 | 円 |
| 資格・職務・役職など固定手当(月額) | 円 | 円 |
| 固定残業代(月額・含まれる時間) | 円/時間 | 円/時間 |
| 夜勤手当(1回×月平均回数) | 円×回 | 円×回 |
| オンコール手当(1回×月平均回数) | 円×回 | 円×回 |
| 休日勤務などその他変動手当 | 円 | 円 |
| 固定残業代以外の残業代(月平均) | 円 | 円 |
| 賞与の算定基礎 | 円 | 円 |
| 賞与の支給月数・見込額 | か月/円 | か月/円 |
| 額面年額 | 円 | 円 |
| 通勤手当・駐車場代など | 別途記録 | 別途記録 |
比較するときは、求人票の月給だけではなく、自分の現在の給与明細も同じ項目に分解することがポイントです。
通勤手当についても、支給される金額だけで判断するのではなく、交通費や駐車場代などの自己負担を別に記録しておくと生活費を比較しやすくなります。
【架空例】日勤のみへ転職したときの年収差を2ケースで試算

ここからは計算方法を具体的に確認します。
以下の金額は、すべて計算方法を示すために設定した架空の給与条件です。日勤のみで働く看護師の給与相場を示すものではありません。
ケース1|基本給と賞与は同じで、夜勤手当だけがなくなる場合
前提は次のとおりです。
- 比較期間:通常年度12か月
- 現職・日勤候補とも基本給25万円
- 固定手当:月3万円
- 現職の夜勤:月4回、1回1万2,000円
- 日勤候補:夜勤なし
- 残業:双方とも月5時間程度と仮定し、比較用の残業代を月1万円とする
- 賞与:双方とも基本給25万円を算定基礎として4.0か月分
- 通勤費は年収計算から分けて比較
- 初年度ではなく通常年度
| 項目 | 現在の職場 | 日勤候補 |
|---|---|---|
| 基本給 | 250,000円 | 250,000円 |
| 固定手当 | 30,000円 | 30,000円 |
| 月額固定部分 | 280,000円 | 280,000円 |
| 夜勤手当 | 12,000円×4回 | なし |
| 残業代の仮定 | 月10,000円 | 月10,000円 |
| 賞与 | 250,000円×4.0か月 | 250,000円×4.0か月 |
| 額面年額 | 5,056,000円 | 4,480,000円 |
| 年収差 | - | ▲576,000円 |
現在の職場は、
28万円×12か月
+1万2,000円×4回×12か月
+1万円×12か月
+25万円×4.0か月
=505万6,000円
です。
日勤候補は、
28万円×12か月
+1万円×12か月
+25万円×4.0か月
=448万円
です。
差額は、
505万6,000円-448万円=57万6,000円
となります。
このケースでは、基本給、固定手当、賞与、残業の前提を同じにしているため、年収差が夜勤手当の年間額と一致します。
57万6,000円を12か月で割ると、額面年額を月平均にした場合の差は4万8,000円です。
ただし、これは手取りが毎月4万8,000円減るという意味ではありません。
ケース2|日勤求人では基本給が上がるが、賞与条件も変わる場合
次は、日勤求人の基本給が現在より高いケースです。
前提は次のとおりです。
- 比較期間:通常年度12か月
- 現職の基本給:26万円
- 日勤候補の基本給:28万円
- 固定手当:現職2万円、日勤候補2万5,000円
- 現職の夜勤:月4回、1回1万3,000円
- 日勤候補:夜勤なし
- 残業:双方とも月5時間程度と仮定し、比較用の残業代を月1万円とする
- 現職の賞与:基本給×4.0か月
- 日勤候補の賞与:基本給×3.0か月
- 通勤費は別に比較
- 初年度ではなく通常年度
| 項目 | 現在の職場 | 日勤候補 |
|---|---|---|
| 基本給 | 260,000円 | 280,000円 |
| 固定手当 | 20,000円 | 25,000円 |
| 月額固定部分 | 280,000円 | 305,000円 |
| 夜勤手当 | 13,000円×4回 | なし |
| 残業代の仮定 | 月10,000円 | 月10,000円 |
| 賞与 | 260,000円×4.0か月 | 280,000円×3.0か月 |
| 額面年額 | 5,144,000円 | 4,620,000円 |
| 年収差 | - | ▲524,000円 |
現在の職場は、
28万円×12か月
+1万3,000円×4回×12か月
+1万円×12か月
+26万円×4.0か月
=514万4,000円
です。
日勤候補は、
30万5,000円×12か月
+1万円×12か月
+28万円×3.0か月
=462万円
です。
したがって、
514万4,000円-462万円=52万4,000円
の差になります。
内訳を見ると、日勤候補では基本給と固定手当の合計が月2万5,000円高いため、
2万5,000円×12か月=30万円
増えています。
一方で、夜勤手当は、
1万3,000円×4回×12か月=62万4,000円
減ります。
賞与も、
- 現職:26万円×4.0か月=104万円
- 日勤候補:28万円×3.0か月=84万円
となり、20万円の差があります。
検算すると、
+30万円-62万4,000円-20万円=▲52万4,000円
で、年収差と一致します。
このように、日勤求人の基本給が今より高くても、夜勤手当や賞与まで含めて計算すると年収が下がる場合があります。
反対に、夜勤手当がなくなっても、基本給や固定手当、賞与などの条件によっては差が小さくなるケースも考えられます。
大切なのは、月給の一部分だけではなく同じ条件で年間総額を計算することです。
生活費・勤務時間・通勤まで合わせて「続けられるか」を判断する

年収差を計算したら、次は「その条件で生活を続けられるか」を確認します。
先ほどのケース1では、額面年収が57万6,000円下がり、年額を12で割った差は月平均4万8,000円でした。
ただし、これは額面上の差です。
所得税や社会保険料などは給与額や家族状況などによって変わるため、「額面年収の80%が手取り」といった方法で一律に換算することは避けましょう。
生活への影響を確認する場合は、まず現在の給与明細で実際の手取り額を確認し、次のような支出を整理します。
- 住宅費
- 食費
- 水道光熱費
- 通信費
- 保険料
- 教育費や保育費
- ローンなどの返済
- 毎月確保したい貯蓄額
- 通勤に伴う自己負担
さらに、日勤への転職では仕事に使う時間も比べます。
たとえば、以下は架空の例ですが、
- 現職:通勤片道45分
- 日勤候補:通勤片道20分
- 月20日勤務
の場合、片道25分、往復で50分短くなります。
50分×20日=1,000分
なので、1か月では約16時間40分の差です。
12か月なら、
1,000分×12=12,000分=200時間
となります。
また、現職では職員駐車場代が月8,000円、日勤候補では自己負担がないという架空の条件なら、
8,000円×12か月=9万6,000円
の年間支出差があります。
一方、勤務先が変わることで交通費、保育時間、昼食などの支出が増える場合もあります。
そのため、転職を判断するときは、
年収の増減
+仕事に伴って増減する支出
+勤務・通勤に使う時間
を合わせて確認すると、実際の生活に近い比較ができます。
また、「日勤のみ」と記載されていても、勤務時間が毎日一定とは限りません。
早番・遅番、土日勤務、オンコール、緊急呼び出しなどがある求人も考えられるため、夜勤の有無だけでなく、実際の勤務時間と当番の有無を確認してください。
求人票と最終条件で確認したいこと

年収を正確に試算するには、求人票に書かれている「月給○万円」だけでは情報が足りないことがあります。
応募を検討するときから内定後までに、年収計算に必要な条件を確認しましょう。
給与で確認する項目
少なくとも次の項目を確認します。
- 基本給はいくらか
- 毎月固定で支給される手当は何か
- 手当に支給条件があるか
- 固定残業代が含まれているか
- 固定残業代がある場合、何時間分・いくらか
- 固定残業時間を超えた場合の扱い
- 夜勤・オンコール・休日勤務などの1回当たりの手当
- それぞれ月に何回程度を想定しているか
- 残業の発生状況と残業代の扱い
- 賞与の算定基礎は何か
- 「○か月分」は確定条件なのか、過去の実績なのか
- 通常年度と初年度で賞与条件が異なるか
- 試用期間中に給与が変わるか
たとえば面接では、
「提示されている月給のうち、毎月固定で支給される部分と、勤務回数によって変わる部分を分けて教えていただけますか」
「賞与は何を算定基礎としていて、通常年度と入職初年度で違いがありますか」
「日勤のみで勤務する場合、オンコールや休日勤務が発生することはありますか」
と確認すると、年収計算に必要な条件を整理しやすくなります。
求人票と最終的な労働条件を照らし合わせる
給与だけでなく、始業・終業時刻、休日、時間外労働、業務内容、就業場所、試用期間なども確認します。
募集時には、業務内容や就業場所などについて明示すべき労働条件が定められています。また、2024年4月からは、募集時などに「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」などの明示事項が追加されています。
最終的には、求人票や面接で聞いた内容だけで判断せず、採用時に示される労働条件通知書などの書面を確認してください。
特に年収については、
求人票に書かれていた条件
→面接などで説明された条件
→採用時に書面で示された最終条件
に違いがないかを確認します。
固定残業代がある場合には、基本給とは分けて、固定残業代の金額、対象となる時間数、超過分の扱いも確認しましょう。
ハローワークで紹介された求人について、求人票に記載された内容と実際に説明された労働条件が異なる場合には、ハローワークへ相談できる制度もあります。
まとめ|日勤のみの年収は「同じ式・同じ期間」で比べる

看護師が日勤のみへ転職した場合の年収差は、夜勤手当だけでは決まりません。
まず、
(基本給+固定手当など)×12
+変動手当
+残業代
+賞与
の形に分けて、現職と日勤候補を同じ通常年度12か月で比較してください。
転職初年度の賞与条件が通常年度と異なる場合は、初年度を別に計算します。
今回の架空例では、
- 夜勤手当だけがなくなるケース:年57万6,000円減
- 基本給・固定手当・賞与条件も変わるケース:年52万4,000円減
という結果になりました。
ただし、これらは日勤のみで働く看護師の相場ではなく、年収の計算方法を示すための例です。
自分の場合は、現在の給与明細と転職候補の条件を同じ表に入れれば、「夜勤がなくなることでいくら減るのか」「基本給や賞与の違いでどこまで補えるのか」を具体的に確認できます。
最後に、額面年収の差だけでなく、生活費、通勤に伴う支出、勤務時間、通勤時間、オンコールや休日勤務の有無まで確認しましょう。
「年収がいくら変わるか」と「その収入と働き方で生活を続けられるか」を分けて計算することが、日勤のみへの転職を判断するためのポイントです。
参考情報:厚生労働省「募集時等に明示すべき事項」、厚生労働省「求人企業の皆さまへ」(固定残業代の表示を含む)、ハローワーク「求人票と実際が異なる旨の申し出」。確認日:2026年10月3日。本文の試算は架空の条件による計算例であり、給与相場を示すものではありません。

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