看護師向けの転職支援サービスには、「相談無料」「求人紹介無料」と案内されているものがあります。無料だと、「紹介会社はどこから収益を得ているのか」「あとから料金を請求されないか」と疑問に感じる人もいるでしょう。
民間の有料職業紹介では、求人を出す医療機関・施設などが、契約に基づいて職業紹介事業者へ紹介手数料を支払う仕組みがあります。一方、職業安定法第32条の3では、有料職業紹介事業者が求職者から職業紹介の手数料を取ることは原則として禁止されています。
求職者から手数料を徴収できる例外は、職業安定法施行規則第20条第2項および同規則附則第4項で、芸能家、モデル、一定の要件を満たす科学技術者・経営管理者・熟練技能者や、附則に定める家政婦・配ぜん人・調理士・マネキンなどについて規定されています。看護師は、これらの求職者手数料の例外職種として規定されていません。
つまり、看護師の転職相談が無料と案内される背景には、「求職者から料金を受け取る」のではなく、「求人者から紹介手数料を受け取る」有料職業紹介の仕組みがあります。ただし、転職支援と別に提供される任意の講座や検査などまで、すべて無料とは限りません。
この記事では、誰がお金を払い、どこまで無料なのか、職業紹介と求人情報提供は何が違うのか、利用前に何を確認すればよいのかを整理します。
この記事の監修

酒井 崇
(株式会社エスネットソリューション)
株式会社エスネットソリューション代表取締役
株式会社エスネットソリューションは、大分県にある医療・介護・福祉に関わるすべての方をトータルにサポートする会社です。
医療・介護・福祉に特化した無料の転職サポートを、大分県をはじめ全国で提供しています。
看護師の転職相談が無料なのは、求人側が紹介手数料を負担する仕組みがあるため

職業安定法第4条では「職業紹介」を、求人と求職の申込みを受け、求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんすることと定義しています。民間企業が手数料や報酬を受けてこの職業紹介を行う場合は「有料職業紹介」に当たり、原則として厚生労働大臣の許可が必要です。
ここでいう「有料」は、必ずしも求職者が料金を払うという意味ではありません。職業安定法第32条の3第2項では、有料職業紹介事業者が求職者から手数料を徴収することを原則として禁止しています。
また、厚生労働省の「令和8年10月1日から適用される職業紹介事業の業務運営要領」では、有料職業紹介事業の手数料制度や、求職者から手数料を徴収できる場合など、事業運営上のルールが整理されています。
求職者から手数料を徴収できる具体的な例外は、職業安定法施行規則第20条第2項と同規則附則第4項に定められています。看護師はその例外職種には含まれていません。
一方、求人者側から徴収する手数料については、職業安定法施行規則第20条および別表などに制度上の定めがあります。実際の手数料額や計算方法は、職業紹介事業者が採用している手数料制度や求人者との契約によって異なります。
そのため、看護師向けの有料職業紹介では、求職者には相談や紹介の費用を請求せず、求人者側から受け取る紹介手数料を収益とする形が用いられます。
ただし、「看護師の転職に関するサービスなら何でも無料」という意味ではありません。職業紹介そのものと、職業紹介とは別に提供される任意サービスは分けて確認する必要があります。
求人側・紹介会社・求職者の関係と費用の流れ

看護師向けの有料職業紹介を、3者の関係で整理すると次のようになります。
| 立場 | 主な役割 | お金の流れ |
|---|---|---|
| 求人者(病院・クリニック・施設など) | 求人を申し込み、採用したい人材の条件を伝える | 手数料表や契約に基づき、職業紹介事業者へ紹介手数料を支払う場合がある |
| 職業紹介事業者 | 求人・求職の申込みを受け、条件を確認し、雇用成立をあっせんする | 求人者などから職業紹介に関する手数料を受け取る |
| 求職者(看護師) | 希望条件を伝え、求人紹介を受け、応募するか判断する | 看護師の職業紹介では、求職者からの職業紹介手数料は原則として徴収されない |
図にすると、基本的な関係は次のイメージです。
求人側 →(紹介手数料)→ 紹介会社
求職者 →(相談・求職申込み)→ 紹介会社 →(求人紹介・応募支援)→ 求職者
紹介会社 →(候補者の紹介)→ 求人側
このうち、求人者から職業紹介事業者へ手数料を支払う仕組みは、求人・求職の申込みを受けて雇用関係の成立をあっせんする有料職業紹介についての説明です。職業安定法施行規則の別表でも、一定の手数料について求人者または関係雇用主から徴収する仕組みが定められています。
また、厚生労働省が運営する人材サービス総合サイトでは、職業紹介事業者の許可・届出情報などを確認できます。職業紹介事業所の検索ページから事業者を検索し、事業所ごとの掲載情報を確認できます。
紹介会社が求人者から収益を得る仕組みを知っておくことは、「無料だから怪しい」と決めつけるためではありません。紹介会社から提案された求人が、自分の希望条件に本当に合っているかを別に確認するための前提知識として役立ちます。
たとえば、紹介された求人について「夜勤回数は希望内か」「通勤時間は許容できるか」「配属先や業務内容は確認できているか」といった条件は、自分でも比較しましょう。紹介を受けたことと、応募・入職を決めることは別です。
職業紹介・求人情報提供・任意の有料サービスは分けて考える

「転職サービス」と呼ばれるものでも、実際の仕組みは同じではありません。特に、職業紹介、求人サイトなどの募集情報等提供、職業紹介とは別の任意サービスは区別して考える必要があります。
| サービスの種類 | 主な内容 | 費用を確認するときのポイント |
|---|---|---|
| 職業紹介 | 求人・求職の申込みを受け、事業者が雇用成立をあっせんする | 看護師の職業紹介では、求職者からの職業紹介手数料は原則徴収されない。事業者の許可情報も確認する |
| 募集情報等提供 | 求人サイトや求人情報誌などで求人情報等を提供する | 職業紹介とは法的な位置づけが異なる。利用規約と料金規定を確認する |
| 職業紹介と明確に区分された任意サービス | 教育訓練、適性検査、労働市場情報の提供など | 本人が希望して利用するものか、料金と金額が事前に示されているか、利用しなくても職業紹介を受けられるか確認する |
厚生労働省の「募集情報等提供と職業紹介の区分」では、求人情報または求職者情報を提供するだけで、求人・求職の申込みを受けず、雇用関係成立のあっせんを行わない場合は、職業紹介には該当しないと整理しています。募集情報等提供事業そのものについては、厚生労働省の「募集情報等提供事業」でも制度や業務運営要領を確認できます。
一方、職業紹介事業者が職業紹介とは直接関係しないサービスを明確に区分して提供する場合は、求職者が自ら希望し、料金が事前に明示されるなどの条件を満たせば、有料で提供できる場合があります。
厚生労働省の「職業紹介を一層効果的に行うための教育訓練等のサービスの提供について」では、具体例として、教育訓練、職業適性検査、労働市場情報等の提供などを挙げています。また、有料サービスについては、職業紹介の前提や条件ではないこと、料金と金額が事前に明示されていること、求職者自身が希望していることなどが必要とされています。
反対に、求職登録や職業相談など、職業紹介の過程で必ず受けるサービスを別料金にする場合は、職業紹介の手数料規制との関係が生じます。
したがって、「無料相談」と書かれているかだけで判断せず、何が職業紹介に含まれ、何が任意の別サービスなのかを確認することが大切です。
無料の範囲と追加費用は、利用前に具体的に確認する

同じ「無料の転職支援」でも、実際に提供する支援内容は事業者ごとに異なります。登録前または初回相談時に、次の項目を確認すると整理しやすくなります。
| 確認項目 | 確認したい内容 |
|---|---|
| 登録・初回相談 | 求職者が支払う料金はあるか |
| 求人紹介 | 紹介を受けること自体に料金はかかるか |
| 応募書類・面接の支援 | 添削や面接準備が支援範囲に含まれるか |
| 応募・面接日程の調整 | 事業者が対応するのか、追加料金の対象か |
| 任意の講座・検査・教材 | 有料か、利用は任意か、断っても職業紹介を利用できるか |
| 利用停止・退会 | 求職者側に費用や条件が設定されていないか |
確認するときは、次のように聞くと具体的です。
- 「登録・相談・求人紹介・応募支援のうち、私が支払う料金はありますか」
- 「有料になる可能性があるサービスはありますか。ある場合は、金額と利用条件を教えてください」
- 「その有料サービスを利用しなくても、求人紹介は受けられますか」
- 「面接の交通費や書類の発行費など、紹介会社への料金以外に自己負担となる費用はありますか」
- 「利用を途中でやめる場合に、求職者側へ費用が発生する規定はありますか」
ここで分けておきたいのが、紹介会社へ支払う利用料金と、転職活動そのものに伴う実費です。たとえば面接会場までの交通費、証明書類の発行費、証明写真などは、紹介会社のサービス料金とは別に自己負担になることがあります。応募先が負担するケースもあるため、必要なら事前に確認しましょう。
料金の説明を口頭だけで済ませず、利用規約、料金ページ、申込画面など、後から確認できる形でも見ておくと安心です。
紹介を受けるときは、料金だけでなく条件・運営情報・個人情報も確認する

無料で利用できることが確認できても、それだけで応募先を決める必要はありません。紹介会社の収益の仕組みと、自分の転職条件の判断は切り分けて考えましょう。
職業紹介の許可情報と運営情報を見る
職業紹介を行うサービスを利用するときは、運営会社名、所在地、問い合わせ先、職業紹介の許可情報を確認します。
厚生労働省の人材サービス総合サイトでは、職業紹介事業者の許可・届出事業所を検索できます。事業所の詳細画面では、許可・届出受理番号、事業主名称、所在地、取扱職種・地域、手数料に関する情報などが掲載されている場合があります。サービス名だけでなく、実際の運営事業者を確認する材料になります。
紹介された求人は同じ項目で比較する
紹介を受けたら、少なくとも次の条件を並べて確認しましょう。
| 比較項目 | 確認例 |
|---|---|
| 雇用形態 | 常勤、非常勤、契約期間の有無 |
| 賃金 | 基本給、手当、賞与、固定残業代の有無 |
| 勤務時間 | 日勤・夜勤の時間、夜勤回数、残業の扱い |
| 休日・休暇 | 年間休日、シフト、希望休、有給休暇 |
| 業務・配属 | 配属予定、業務範囲、異動の可能性 |
| 試用期間 | 期間と、期間中に条件変更があるか |
| 通勤 | 所要時間、交通費、駐車場など |
厚生労働省は、求人企業や職業紹介事業者等が募集・職業紹介を行う際に労働条件を明示することを求めています。「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」では、2024年4月1日から、従事すべき業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準なども明示事項に追加されたことが案内されています。
また、求人票や紹介時の情報だけでなく、労働契約を締結するときには実際に適用される労働条件を確認してください。厚生労働省の「確かめよう労働条件|採用時にはどのような労働条件が明示されるのでしょうか?」では、労働契約締結時に明示される労働条件や書面による明示について確認できます。
連絡方法と転職時期も最初に伝える
夜勤や不規則勤務がある場合は、連絡を受けやすい時間帯や方法を最初に伝えておくと、相談を続けやすくなります。たとえば「勤務中は電話に出にくい」「まずは情報収集で、すぐには応募しない」といった希望です。実際に選べる連絡手段はサービスごとに異なるため、登録時に対応可否を確認してください。
希望と異なる求人が続く、いったん活動を止めたいと感じた場合も、その意思を伝えて構いません。求人紹介を受けること、応募すること、内定を承諾することはそれぞれ別の段階です。紹介担当者の説明を参考にしつつ、最終的には自分が条件に納得できるかで判断します。
個人情報がいつ、誰に共有されるか確認する
転職相談では、氏名、連絡先、資格、職歴、希望条件などを登録することがあります。
職業安定法第5条の5では、職業紹介事業者などが求職者等の個人情報を収集・保管・使用するときは、業務目的の達成に必要な範囲で目的を明らかにし、その目的の範囲内で扱うことを原則としています。
登録前に、次の点を確認しておきましょう。
- 個人情報の利用目的
- 応募前に求人先へ情報が共有されるか
- どの段階で氏名や職歴を求人先へ伝えるのか
- 現在の勤務先への連絡が行われないか
- 個人情報に関する問い合わせ窓口
特に、まだ応募を決めていない段階では、「求人先へ情報を出す前に、自分に確認してほしい」と伝えておくと、意思確認のタイミングを明確にできます。
費用の説明や職業紹介事業の制度について不明点が残る場合は、まず事業者へ確認し、必要に応じて厚生労働省や都道府県労働局が案内する職業紹介事業の相談窓口で制度を確認する方法もあります。
まとめ|看護師の無料転職相談は、費用の流れと無料の範囲を確認して使う

看護師の転職相談が無料と案内される主な理由は、民間の有料職業紹介で、求人側が職業紹介事業者へ紹介手数料を支払う仕組みがあるためです。職業安定法第32条の3第2項では、求職者から職業紹介の手数料を徴収することは原則として禁止されています。
例外については、職業安定法施行規則第20条第2項および同規則附則第4項に対象となる職種や条件が定められており、看護師はその例外職種として規定されていません。
ただし、求人サイトなどの募集情報等提供や、職業紹介とは別に希望者だけが利用する講座・検査などは、職業紹介と同じ料金ルールで考えられない場合があります。「無料」という表示だけで判断せず、相談、求人紹介、応募支援のどこまでが無料なのか、有料の任意サービスがあるなら金額と利用条件は何かを確認しましょう。
紹介会社の収益源を理解したうえで、紹介された求人は勤務時間、給与、休日、業務内容、配属などを自分の希望と照らして比較します。費用と求人条件の両方を確認できれば、「無料だから使う・使わない」ではなく、自分に必要な支援かどうかで判断しやすくなります。

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